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「エホバの証人」についての情報サイト

2009年5月10日

エホバの証人と夫婦関係-裁判例に基づく考察④

第3 裁判例に基づく分析

 では、一般論はここまでにして、実際に日本国内で生じたエホバの証人信者の離婚訴訟の具体例について考察してゆきたいと思います。

1.裁判例についての雑感

 まず最初に、日本国内の「エホバの証人離婚訴訟」の全体像につき雑感を述べておきたいと思います。

 現在Web上のシステムやDVDなどの形で、法律実務家や大学の研究者などを対象とした「判例検索システム」が幾種類か存在しますが、そのうちの一つを利用して「エホバの証人」で検索してみると、実に多くの裁判例がヒットします。そして、驚くことにそのうちの大多数、約20件の裁判例は、輸血拒否の判例でも武道の拒否の判例でもなく、エホバの証人信者の「離婚訴訟」についての裁判例です。

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 また、最近、第一東京弁護士会の人権擁護委員会から『離婚をめぐる相談100問100答』という書籍が出版されましたが、その中には「信仰の自由と離婚」と題する独立した講が設けられており、実質的にこの講は「日本国内でエホバの証人が引き起こす夫婦問題」について扱った講となっています。というのは、この講の中では14の裁判例が紹介されており、その全てがエホバの証人教理とその活動を理由とした離婚訴訟の裁判例となっているからです。

 これらの検索システムや専門書は、裁判官や弁護士といった法律実務家が類似事例に直面した場合の先例とするために事務的に用意されているものです。したがって、特に何の偏見も持たない(偏見を持つ理由がそもそも存在せず、中立的であることが職業的に強く要求されている)裁判官や弁護士、法律研究者の中に「エホバの証人」について調べたことがある人がいれば、この宗教は一般的にいって「夫婦関係に問題を引き起こす宗教である」との第1印象を持つのが当然のことであるように思えます。
(これに対して、エホバの証人信者の人たちの多くは「エホバの証人が家族問題を引き起こすと考えるのは偏見であり、物事をよく知らないからだ」との主張をされますが、その主張には客観的な根拠が存在せず、物事をよく知らない(或いは事実を知らされていない)のは、残念ながら個々のエホバの証人信者の側であると、結論付けざるを得ないのではないかと考えます。)

この点、高名な弁護士である滝本太郎氏が、「弁護士10年やれば、エホバの証人の離婚事件の相談は、誰でも一度は受けるのではないか」と発言されていることや(*注1)、朝日中央綜合法律経済事務所グループの作成している「離婚完全ガイド」(*注2)内の「離婚の基礎知識」の項などにも、複数のエホバの証人離婚裁判例が離婚訴訟の典型例として紹介されいることなどは、大変興味深い事実です。

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 なお、付言すると、これらエホバの証人教理により引き起こされた離婚訴訟の裁判例のうち、「妻が信者であり夫が一般人である」というケースの割合は、実に「100%」でした。エホバの証人の実態についてのデータを取ることは極めて困難であるといわれていますが、裁判例に見られるこの貴重な事実からは、日本国内では、エホバの証人には妻のみが入信するケースが多く、信者でない夫と信者となった妻との間で問題が生ずるケースがほとんどであると一応結論付けることができるのではないかと考えられます。

 では幾つかの実際の裁判例につき、以下、比較的詳細な形で判決文を紹介するとともに、本サイト作成者からの簡単なコメントを示してゆきたいと思います。
(以下に示す、「裁判所の認定した事実」や「裁判所の判断」の項目の下の文章は、全て実際の判決文からの直接の引用です。但し、読みやすさへの配慮から、「甲・乙、控訴人・被控訴人」といった表現を「夫・妻」に置き換えており、また判決文で付されている仮名を「長男・長女、ニ男・二女」といった表現に置き換えてあります。これら以外は、全て裁判官の記した判決書そのままの表現で引用してあります。)

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*注1ーURL:http://sky.ap.teacup.com/takitaro/568.html

*注2-URL:http://www.ac-rikon.jp/information
/information01/index03.html