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2009年12月9日

エホバの証人と夫婦関係-裁判例に基づく考察⑨

第3 妻を説得するべきか

さて、これまで見てきたようなエホバの証人組織が夫婦関係にもたらす影響・子供の人生にもたらす影響、そして何よりもエホバの証人という宗教組織の実態・本質を考えると、夫が信者である妻に対してエホバの証人を辞めるように説得することを真剣に考え始めたとしても無理のないことであり、むしろ自然なことであるように思われます。

そこで、そもそもエホバの証人を辞めるよう妻を説得すべきであるか否か、仮に説得をするとした場合にどのような点に留意してそれを行うべきであるのかという点について少し考えてみたいと思います。

1.前提

この点を考える前に、まずひとつの重要な前提を確認しておく必要があるのではないかと思われます。その「前提」とは、「妻がエホバの証人に入信したのには必ず何らかの理由がある」という点です。多くの場合その「理由」というのは、家庭で満たされないものを求めて入信した、というものであるようです。

この宗教の特徴として、夫婦のうち妻だけが入信し、やがて妻が子供を入信させるというパターンが非常に多いという点はすでに指摘のとおりですが、夫に社会的地位があり、仕事が忙しくて家庭を顧みないために、空虚感を満たすために妻が入信したというケースはとても多いように見受けられます。

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夫が毎日毎日家を留守にしているという状況の中で、エホバの証人信者に家に訪ねてこられ、「幸福な家庭の秘訣を知りたいと思いませんか」と勧められたり、或いは裁判例のケース③の母親のように、子育てに悩み一人で孤立しているところに「誰しもが子育ての方法について悩むと思うのですが、世界のベストセラーである聖書の述べる指針を少し見てみませんか」などと勧められることにより、この教理に関心を持つようになるわけです。

そして、エホバの証人の集会に行ってみると、はじめのうちは「ラブシャワー」と呼ばれる大歓迎を受け、一つ一つの行動を全面肯定されることとなります。そこには似たような状況の「仲間」も多くいます。つまり、妻が本質的に求めていながらも夫がそれを満たすことが出来ないでいた欲求を、この組織が表面的に提供してくれるわけです。

やがて、この宗教は妻の生活や考え方そのものを支配するようになり、しかもその宗教教育は、週2回、3回のペースで5年、10年、20年と継続的に与えられます。

したがって、この生活や考え方を支配しつくしている宗教から脱却させるには、それ相応の努力と時間が必要でしょうし、仮にこの宗教から脱却させたとしても、当然に妻の心と生活には、いままでこの宗教が入り込んでいた分の大きな穴がポッカリと開くこととなります。その開いた穴については、いまや夫自身が代わりとなるものをきちんと提供してゆくべきなのであって、それが出来ないということであれば、妻の心と生活から、この宗教を無理やりに引っぺがすということをすることは妻のためにはならず、そのようなことをする資格もまた夫にはないというべきなのかもしれません。

2. 説得の方法

では、もしも夫が妻を説得することを決意した場合、どのような方法でこれを行うべきなのでしょうか。

端的に言って、「太陽と北風」の話を思いに留め、「太陽方式」を採るということが、成功の秘訣であるように思われます。

(1)北風方式の弊害

ア. まず「北風方式」、すなわち強硬な姿勢で妻の宗教活動に反対し、無理やりに辞めさせるという方法は避けるのが懸命であるように思われます。

その理由の一つは、こうした正面からの反対はそもそも功を奏さず、むしろ逆効果になるからです。

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エホバの証人の教理を学ぶ人は、極めて早い時期に「これは真の宗教であり、この世はサタンに支配されているゆえに、必ず反対に直面する」と教えられます。したがって、夫がこの宗教に反対を始めると、これによって妻は「教えられたとおりだ。やはりこれは真の宗教なのだ」と確信を深めてしまうことになります。

エホバの証人の発想の特徴は、「とにかく自分たちは特別なのだ」と考えるという点にあります。したがって、世間から賞賛されれば「やはり自分たちは特別な真の宗教なのだ」と解釈しますし、もし反対に直面すれば「自分たちは真の宗教なのだから迫害されるのだ。反対されているということは、やはりこの宗教に間違いはないのだ」と解釈します。また、夫から反対される妻に対しては、「もしあなたが反対に屈すれば、あなたが愛しているそのご主人もこの真の宗教に入ることができなくて、やがて滅びることになるんですよ。 ご主人を愛しているのであればこそ、反対に屈してはいけない」などと、極めて感情的かつ逃げ場のない教えが繰り返し与えられることになります。

したがって、夫が正面を切って反対するということは、逆に、妻がこの宗教にさらに専念するための燃料を投下するような事態であるわけです。

イ.正面から反対することにはもう一つの深刻な弊害があります。それは、仮にこの宗教から引き剥がしたとしても、夫婦の関係自体を破壊してしまう恐れがあるということです。

前述したように、この宗教に没頭している妻はたいていの場合、生活も友人関係も心もすべてこの宗教に支配されており、かつ、その支配は長年にわたっています。こうした状況の妻を、力でその活動から引き離すのは、相当の威嚇が必要であり、ある場合は暴力にすら至るかもしれません。

そのような妻の尊厳を無視する方法をとった場合には、妻を宗教から引き離すことに成功した頃には、その方法自体により夫婦関係が破壊されてしまっている可能性が高いかもしれません。夫婦関係の改善のために採る行動が、結局夫婦関係を破壊したということでは、全く意味がないのではないでしょうか。