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「エホバの証人」についての情報サイト

2009年5月18日

エホバの証人と夫婦関係-裁判例に基づく考察⑦

③東京高等裁判所平成2年4月25日判決
(妻の宗教活動により夫婦関係が悪化し婚姻関係が破綻した場合においてその責任は夫と妻の双方にあるとして夫の離婚請求が認容された事例)

■裁判時の夫婦の状況:

結婚20年目で18歳の長女・15歳の長男・5歳の二女あり。

■裁判所の認定した事実:
 
 妻は、長女がかつて傷害を負い、後遺症が残ったため、同女の治療や養育に悩み、昭和五一年ころからキリスト教の一派である「エホバの証人」主催の「聖書の勉強会」に参加するようになった。
 妻の信教状況は、当初の二年間は、「エホバの証人」の関係者に週に一度一時間位自宅に来てもらって聖書の話を聞く程度であり、夫もこのことを許し、外で集会があるときは、自己の自動車で妻を送るなどしていたが、妻は、昭和五三年ころから「エホバの証人」の熱心な信者となり、定期的に集会に参加するようになった。集会の時間は、火曜日は午後七時から同八時まで、木曜日は午後六時半から同八時半まで、日曜日は、午前九時半から同一一時半まで(当初は午後二時から同四時まで)であった。また、妻は、そのころから、昼間も伝導活動に従事するようになった。妻は、夫が仕事から帰宅しても家におらず、夕食が冷えたまま用意されていることもあった。
 夫は、昭和五四年ころに至って、妻の信仰している宗教が「エホバの証人」であることを知った。そして、書物等から「エホバの証人」は、正月、雛祭等の風俗的習慣による行事や葬儀の際の焼香等を行ってはならないこと、政治との関わり合いをもってはならず選挙権を行使してもならないこと、格闘技をしてはならず、子供は運動会の騎馬戦にも参加してはならないこと、輸血は罪悪であり、事故等により輸血が必要になってもこれを拒否しなければならないこと等の独特の教義をもっていることを知り、また、妻が、前記集会への出席、伝導活動等で家を明けることが多かったこともあって、妻に対し、「エホバの証人」を信仰するのを止め、集会等への出席も止めるよう説得するに至ったが、妻は、この説得を全く聞き入れようとはせず、逆に夫に対し右宗教への入信を勧めるなどした。
 夫は、妻がエホバの証人の集会に参加したり、伝導活動をしたりするのを止めさせるため、妻の父親や仲人等に依頼して妻を説得してもらい、また、昭和五七年九月には、地方に在住する夫の両親や妻の父をも東京都内に招き、同人らを交えて妻と協議をしたが、妻は、宗教活動を止めたり、これを自粛したりすることを拒否し続けた。
 妻は、昭和五三年ころから集会や伝導活動に長男、長女を連れて行くようになっていたが、夫が妻の宗教活動に反対し、子供らを宗教活動に連れていくことを止めるよう説得するようになってからも、その反対、説得を無視して子供らを集会や伝導活動に参加させていた。
 その間、夫の父が、昭和五九年死去し、その葬儀が行われた際にも、妻は二女を妊娠しているという理由で出席せず、長女も出席を拒否し、長男だけが出席して周囲の勧めで焼香したが、妻は、これを夫の強制によるものと考えて快く思わなかった。さらに、妻は、夫の父の一周忌にも特段の理由なく出席せず、長女も出席を拒否し、長男一郎のみが出席したが、焼香は拒否するに至った。
 夫は、昭和五〇年に同人の姉が肺結核になり、昭和五三年に同人の父が脳血栓で倒れたころから、酒をよく飲むようになったが、妻が「エホバの証人」に入信したことを知ってからは、強度の困惑と不安を覚え、酒で気を紛らわし、かつ、酔ったあげく妻に対し辛く当たることが多くなった。妻は、これに対し、夫がアルコール依存症にかかり、そのため精神的に不安定な状態になっているとして、昭和六〇年ころから、精神科医に相談したり、夫を精神科医に連れて行って診断を受けさせたり、夫の上司に相談したりしたが、夫は、妻のこのような態度は夫をないがしろにするものであると考え、妻に対しますます嫌悪感をつのらせていった。
 妻は、昭和五九年に二女を妊娠したところ、夫は、夫婦関係が既に破綻していることを理由にその出産に反対したが、妻は、これに従わず、昭和六〇年に出産した。
 夫は、妻が前記のとおり夫の気持ちを無視して宗教活動を続けることに怒りを爆発させて、昭和六〇年三月ころ及び同年六月ころの二回にわたり、妻の家計簿を破ったり、二女のおむつを風呂桶に投げ込んだり、二女の布団やコンビラックに「殺人宗教エホバ」、「自分の子供も殺しますエホバ」、「邪宗エホバの証人」等と落書きしたり、さらに金属バットで二女のべビーベッドやコンビラックを壊したりしたことがあった。
 妻は、昭和六〇年九月には、「エホバの証人」において、年間一〇〇〇時間、月九〇時間の奉仕活動を行う「全時間奉仕者」となり、以来、宗教活動に没頭している。また、長女、長男をも積極的に集会に参加させ、現在では両名とも「エホバの証人」の熱心な信者となるに至っている。さらに妻は、二女に対しても、幼い時から聖書を読むべきであるとして聖書を与え、これを読ませている。
 夫は、昭和六〇年の初めころから自宅の二階で家族とは独立した生活をするようになり、夫婦の家庭内別居の状態が始まった。さらに昭和六一年四月には、夫が自宅を出てアパートで生活するようになり、妻及び三名の子供らとは全く別居するに至った。
 夫は、昭和五九年に東京地方裁判所八王子支部に離婚の調停を申し立て、期日が五回にわたって開かれたが、同年一〇月右調停は不調のまま終了した。また、夫は、昭和六二年二月にも再度右支部に離婚の調鄲を申し立て、期日が二回開かれたが、同年三月調停不成立により終了した。
 以上の次第で、夫は、妻が宗教にのめり込み家庭生活をないがしろにしたとして、妻及びその宗教活動を嫌悪し、さらに現在では、妻が今後宗教活動を止めても同人と再び同居する気持ちはないと述べるばかりか、子供らと一緒に生活する気持ちをも失っている。これに対し、妻は、現在では、離婚する気持ちは全くなく、夫が帰ってくるのをいつまでも待っているとし、また、夫が「エホバの証人」を嫌悪するのは、同人がその教義を正しく理解しておらず、かつ、アルコール依存症により精神状態が不安定になっているためであると考え、将来夫が「エホバの証人」を正しく理解するようになれば、夫との正常な婚姻生活を続けることができるものと考えている。しかし、夫のために、自己の宗教活動を自粛する考えは全くもっていない

■裁判所の判断:

○以上に認定の事実関係に基づき、夫と妻との間の婚姻関係が破綻しているか否かについて判断する。

 前記認定の事実によれば、夫は、妻が「エホバの証人」に入信していることを知った後は、妻及びその宗教活動を強く嫌悪し、妻に対し宗教活動を止めるよう説得したが、これが受け入れられないばかりか、子供たちまでも宗教活動に参加するようになり、妻に同調する立場をとるに至ったこともあって、家庭内でますます孤立し、その結果、飲酒にふけったり、落書きや器物破損に及んだりした上、遂には自ら家を出て別居するに至っている。これに対し、妻は、宗教活動に参加することによって家族の夕食を作る等の家事までないがしろにすることはなかったものの、夫が妻及びその宗教活動を嫌悪していることについては、単に夫が「エホバの証人」を正しく理解しないためであるとして、逆に入信を勧めることはあっても、夫の気持ちを思いやって宗教活動を自粛する等の努力をすることはせず、むしろ、夫の反対を押し切って子供らをも積極的に宗教活動に参加させており、そのことが、夫の気持をますます妻や家庭から離れさせる結果を招いている。
 しかも、夫は、前記認定の経過に基づき、自らの意思によって既に長期間別居しており、今後妻が宗教活動を止めても再び夫婦としての共同生活を営む気持ちは完全に喪失したと考えているのに対し、妻は、夫と離婚する気持ちは全くなく、夫が帰ってくるのをいつまでも待っているとはいうものの、夫との共同生活を回復するために、宗教活動を止めるとか自粛する気持は毛頭なく、夫が「エホバの証人」を嫌悪するのは、同人がその教義を正しく理解しておらず、かつ、アルコール依存症により精神状態が不安定になっているためであると考えるなど、夫の考え方とは全く相容れない正反対の考え方をしているから、今後、双方が相手のために自分の考え方や立場を譲り、夫婦としての共同生活を回復する余地は全くないものといわざるを得ない。
 したがって、夫と妻との婚姻関係は、既に完全に破綻しているものと認めるべきである。

○そこでさらに、夫と妻との間の婚姻関係破綻の責任がいずれにあるかについて判断する。

 ところで、信仰の自由は、個人の基本的人権に属する問題であり、夫婦といえどもこれを侵害することは許されない。しかし、夫婦の間では、互いに相手の考え方や立場を尊重して、自己の行為の節度を守り、相協力して、家族間の精神的融和をはかり、夫婦関係を円滑に保つように努力をすべき義務があるのであり、夫婦の一方が自己の信仰の自由のみを強調し、その信仰に基づく宗教活動に専念して、相手の生活や気持ちを全く無視するような態度をとった結果、夫婦関係が悪化し、婚姻関係を継続しがたい状態に立ち至った場合には、その者にも婚姻関係破綻の責任があるとされてもやむを得ないものといわなければならない。
 一方、前記認定の事実によれば、夫は、妻との婚姻生活中、飲酒にふけり、酔余落書きや器物損壊に及んだこと等が認められるが、これらは、婚姻関係破綻の原因というよりは、むしろその結果というべきであり、仮にこれらが婚姻関係破綻の一因となったとしても、これのみでその破綻が生じたものとは解し得ない。また、夫が妻に対し、同人の宗教活動を止めさせようとしたこと自体も、前記認定の事実関係の下においては、それほど非難に値する行為であったということはできない
 むしろ、本件においては、当事者双方が、それぞれ相手方の考え方や立場を無視してかたくなな態度をとり、婚姻関係を円満に継続する努力を怠ったことが婚姻関係破綻の原因であると考えられるから、夫のみに右婚姻関係破綻の責任を負わせることはできず、その責任は夫と妻との双方にあるものといわざるを得ない。
 そうすると、夫の本件離婚の請求は、民法七七〇条一項五号所定の事由に該当し、その理由があるというべきである。そして、前記認定の事実を総合して考えると、夫と妻の間の三名の子の親権者は、いずれも母である妻と定めるのが相当である。

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■サイト作成者のコメント:

①すでに述べたように、エホバの証人はしきりと「この教理を学んだおかげでアルコール依存症を克服し幸福になった夫婦が数多く存在する」と主張しますが、皮肉なことに本件では、裁判所が「エホバの証人教理を学んだがゆえに婚姻関係が破綻し、その結果として配偶者が飲酒にふけるようになった」と認定しています。同種の事例は、おそらく世界中で無数に存在することでしょう。
②本件で裁判所は、「妻は、夫が帰ってくるのをいつまでも待っているとはいうものの、宗教活動を止めるとか自粛する気持は毛頭なく、夫がエホバの証人を嫌悪するのは、同人がその教義を正しく理解していないためであると考えるなど、夫の考え方とは全く相容れない正反対の考え方をしている」旨を端的に指摘しています。
エホバの証人内部では「エホバ(神)は離婚を憎まれる」と教えられ、形式的には「可能な限り離婚はしないように」と教えられています。そして、多くのエホバの証人信者の妻は「自分は妻としての責任を果たしているし、離婚を望んではいない。今でも夫を愛している。」などと述べて自分と自分の宗教教義に酔い、「それなのに関係が破綻しているのはひとえに夫のエホバの証人に対する理解の欠如だ」と考えているような印象を受けます。本件は、まさしくこのような頑なで独りよがりで一方的なエホバの証人サイドの発想こそが、夫婦関係を崩壊させるものだと指摘する裁判例になっています。